研究活動

研究の概要

覚・憶・感性などに関する心理学研究を行なっています。
特に、視覚やイメージなどの非言語的な知の働きに着目し、視空間的な認知能力についての研究を進めています。

視空間認知能力とは

五感の中でも視覚(「ものを見ることは個人の行動から社会・文化に至るまで幅広い重要性があります。例えば、しぐさや表情から他者の意図や印象を読み取ったり、商品や広告のデザインから好みや価値を判断したり、絵画や都市景観に美しさを感じるなど、人間の思考や感性は多くの状況で視覚に頼っています。図やグラフなどの視覚的な表現を使うことで複雑な情報も効率的に伝えることができるように、コミュニケーションにおいても視覚情報は重要です。

空間的な思考は科学や工学、そして芸術にも深い関連があります。頭の中で三次元の空間をイメージする能力は、建築家が空間を構想し、技術者が図面から機械の動作を理解し、アニメーターが動きを描き出すために不可欠です。科学や数学の概念を理解する際に空間的思考能力が重要であることも明らかになっています。また、医学・生物学や建築・美術の核心には視覚的・空間的な知識が多く含まれるため、それらの習得には高度な視空間的思考能力が要求されます。

このように、視覚的・空間的な情報を知覚し、解釈し、記憶し、また表現することは、人間の生活と社会を支える基盤的な認知能力です。また、心の中にイメージを抱く能力——心(Mind’s Eye——は、科学・工学の進歩や、芸術・文化の創造をもたらしてきました。こうした背景によって、視空間認知能力の研究はその意義と重要性が基礎づけられています。

研究の目標と方法

どのように人はもの・他者・世界を見ているのか、目にした出来事を人はどう解釈し、記憶しているのか、イメージを作る能力は人間の行動や社会にどのような影響を与えているのか、といった問題について、その現象や機能、メカニズムを実証的に解明する研究を展開します。視覚心理学・空間心理学・芸術心理学といった関連諸領域の知見を基盤としつつ、それらを「ものの見かたの科学」という枠組みの下で俯瞰的に研究して行きたいと考えています。

実験心理学を方法論的な基盤としつつ、コンピュータ・ビジョンや美術理論など、「見ること」を扱う他分野の知見も取り入れながら研究を進めることを意識しています。また、機械学習、バーチャル・リアリティ、統計的画像解析などの工学的手法を応用することで、従来の実験心理学ではアプローチが難しかった問題(複雑な視覚・空間情報の生成と制御、およびそれらの定量的解析など)に特に積極的に取り組んでいます。

Research Topics

ものを見る能力についての研究

コーナーミラー錯誤

鏡を通してその向こう側の空間を見る際に生じやすい、空間位置に関する誤判断の現象を報告し、そのメカニズムについて考察しました。

絵画スタイルの記憶

風景画像の配色を記憶する際に、規則的な記憶の歪みが生じる現象を発見しました。また、そのメカニズムを説明するための、画像の統計的特徴に基づく計算モデルを提案しました。

物体の光沢感の記憶と恒常性

環境内の照明が変化してもモノの光沢感を正しく知覚できること(光沢知覚の恒常性)が知られていましたが、記憶から思い出された物体でも光沢感の恒常性があることをCGを用いた実験で示しました。

人間の歩行動作方向の知覚と記憶の形成過程

定説ではワーキングメモリ表象の形成は極めて高速とされます。しかし、人間の歩行動作という複雑かつ動的な視覚情報の場合、数秒程度の長い記憶形成過程が必要であることを見出しました。

空間行動についての研究

VR環境で人はどう空中を探索するか

三次元空間内を自由に飛べる状況で、人はどのように空間を探索するのかをVRを用いた実験で調べました。飛行経路のパターンや、個人差の存在を発見しました。

町に坂や起伏があると道に迷いにくくなる?

起伏のある環境では、坂の特徴をよく記憶しているほど道に迷いにくくなることをVRを用いた実験により発見しました。ただし、坂の活用には高い空間認知能力が要求されることも示唆されました。

芸術に関する研究

画像解析を用いた絵画の熟達過程の研究

絵の技術が上達するにつれて、その人が描く絵は何がどのように変化していくのかを、画像解析技術を用いた手法によって検討しています。

Publications

書籍

津田裕之(2019年). 第15章 犯罪心理学・産業心理学, 古見文一・小山内秀和・樋口洋子・津田裕之編,『はじめての心理学概論 公認心理師への第一歩』, ナカニシヤ出版, 2019年4月.

津田裕之(2017年). 複雑さとわかりやすさを両立させるには—道に迷いにくい空間設計, 養成読本編集部(編),『VRエンジニア養成読本』, 技術評論社, 2017年4月.

査読付き学術論文

Tsuda, H., & Saiki, J. (2019). Gradual formation of visual working memory representations of motion directions. Attention, Perception, & Psychophysics, 81(1), 296–309. https://doi.org/10.3758/s13414-018-1593-9 / [Journal site]

Tsuda, H., & Saiki, J. (2018). Constancy of visual working memory of glossiness under real-world illuminations. Journal of Vision, 18(8):14, 1–16. https://doi.org/10.1167/18.8.14 / [Journal site]

国際学会発表

Fujimichi, M., Tsuda, H., Yamamoto, H., & Saiki, J. (2018). Visual working memory processes for objects’ material properties in the human prefrontal cortex. The 48th Annual Meeting of Society for Neuroscience, San Diego Convention Center, USA, November 5, 2018.

Fujimichi, M., Tsuda, H., Yamamoto, H., & Saiki, J. (2017). Neural substrate of objects’ material properties held in visual working memory. The 47th Annual Meeting of Society for Neuroscience, Washington DC, USA, November, 2017.

Tsuda, H., & Saiki, J. (2017). Image Statistics and Visual Working Memory of Glossiness. Poster Presentation at 40th European Conference on Visual Perception, Henry Ford Building, Berlin, Germany, Aug 27-31.

Tsuda, H., & Saiki, J. (2015). Visual Working Memory for Surface Roughness. Poster Presentation at Psychonomic Society’s 56th Annual Meeting, Hilton Chicago, Illinois, November 19-22.

Tsuda, H., & Saiki, J. (2014). Visual short-term memory for surface reflectance properties across variations in illumination. Poster Presentation at 37th European Conference on Visual Perception, Sava center, Belgrade, Serbia, Aug 24-28.

Tsuda, H., & Saiki, J. (2014). Memorizing slope but not elevation facilitates navigation in a virtual environment. Poster Presentation at Vision Sciences Society Meeting, St. Pete Beach, Florida, May 16-21.

Tsuda, H., & Saiki, J. (2013). Gradual encoding and decay in visual working memory. Poster Presented at Vision Sciences Society Meeting, Waldorf Astoria Naples FL, May 10-15.

Tsuda, H., & Saiki, J. (2012). Resource Allocation in Visual Working Memory for Structural Information is Affected by Exposure Duration. Poster presented at 53th Annual meeting of the Psychonomic Society. Minneapolis, MN, Nov 15-17.

国内学会発表

藤道宗人, 津田裕之, 山本洋紀, 齋木潤. (2017). 質感の視覚記憶情報は腹側高次視覚野と頭頂間溝で表現される. 日本基礎心理学会第36回大会, 大阪, 12月.

津田裕之. (2017). コーナーエラー:鏡映認知の新しい錯誤. 空間認知研究会2017, 口頭発表, 広島国際大学広島キャンパス, 8月22日-23日.

津田裕之, 齋木潤. (2016). 短期記憶における質感情報の符号化. 日本基礎心理学会第35回大会, ポスター発表, 東京女子大学, 10月29日-30日.

津田裕之, 齋木潤. (2015). 空中の探索方略:飛行の姿勢と経路、および空間認知. 日本基礎心理学会第34回大会, ポスター発表, 大阪樟蔭女子大学・小阪キャンパス, 11月28日-29日.

津田裕之, 齋木潤. (2015). つやとなめらかさは別々に記憶される:視覚性短期記憶における光沢と粗さの独立な貯蔵. 日本心理学会第79回大会, ポスター発表, 名古屋国際会議場, 9月22日-24日.

津田裕之, 齋木潤. (2014). 物体の表面質感の記憶は照明の変化にどう影響されるか. 日本認知心理学会第12回大会, ポスター発表, 仙台国際センター, 6月28日-29日.

津田裕之, 杉本匡史, 齋木潤. (2013). 坂の町を歩く―環境の高度差の認知と移動行動の関係―. 日本心理学会第77回大会, ポスター発表, 札幌市産業振興センター, 9月19日-21日.

津田裕之, 杉本匡史, 齋木潤. (2013). 大規模空間における土地の高低差の学習:仮想環境による検討. ヒューマン情報処理研究会, 口頭発表, 新潟国際情報大学, 2013年7月13日-14日.

齋木潤, 坂野逸紀, 金津将庸, 津田裕之. (2013). 質感の記憶:表象構造と精度の定量化. 質感情報学第6回領域班会議, ポスター発表, 金沢市文化ホール, 6月3日-5日.

津田裕之, 齋木潤. (2012). 視覚性短期記憶表象の形成における累加的な符号化過程. 日本基礎心理学会第31回大会, ポスター発表, 九州大学, 11月3日-4日.

津田裕之, 齋木潤. (2012). 複雑な視覚情報に対するワーキングメモリの記憶精度. 日本心理学会第76回大会, ポスター発表, 専修大学, 9月11日-13日.

津田裕之, 齋木潤. (2012). バイオロジカルモーションに対する視覚性ワーキングメモリの精度. 日本認知心理学会第10回大会, ポスター発表, 岡山大学津島キャンパス, 6月2日-3日.

紀要・抄録等

津田裕之, 齋木潤. (2016). 質感の視覚性短期記憶の照明変化に対する頑健性. Technical Report on Attention and Cognition(2016) No.17.

津田裕之. (2016). 実験心理学研究におけるゲームエンジンの有用性. 心の先端研究ユニット若手研究者交流会, 京都大学稲盛財団記念館, 2月14日.

津田裕之, 齋木潤. (2015). 低価格視線計測装置と実験心理学: ライブラリの開発とその評価. Technical Report on Attention and Cognition(2015) No.22.

津田裕之, 齋木潤. (2014). ナビゲーションに環境内の起伏が与える影響. Technical Report on Attention and Cognition(2014) No.19.

津田裕之, 杉本匡史, 齋木潤. (2013). 大規模空間における土地の高低差の学習:仮想環境による検討. 信学技報, vol. 113, no. 128, HIP2013-40, pp. 37-41.

津田裕之, 齋木潤. (2013). トップダウンの注意がワーキングメモリ表象の精度に与える効果. Technical Report on Attention and Cognition(2013) No.26.

津田裕之, 杉本匡史, 齋木潤. (2013). 大規模空間における土地の高低差の学習 : 仮想環境による検討. 信学技報 113(128), 37-41, 2013-07-13.

雑誌記事等

津田裕之(2014). Processingを用いた心理実験プログラミング〈導入編〉. 心理学ワールド, 2014年10月号.

講演・ワークショップ等

津田裕之(2018). Rを用いた画像データの分析・報告. CAPSワークショップ, 関西学院大学, 上ヶ原キャンパスハミル館ホール, 2018年1月27日.

津田裕之(2017). Rを用いた画像処理プログラミング. 日本心理学会第81回大会チュートリアルワークショップ, 久留米シティプラザ, 福岡県, 2017年9月20日.

津田裕之(2013). Processingによる心理実験プログラミング入門. 日本心理学会第77回大会チュートリアルワークショップ, 札幌コンベンションセンター, 2013年9月20日.

CV

専門分野

実験心理学・認知心理学・認知科学

略歴

2020年1月〜現在
慶應義塾大学 先導研究センター 特任助教

2019年4月〜2019年12月
産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 自動車ヒューマンファクター研究センター(行動モデリング研究チーム) 特別研究員

2019年3月
京都大学 大学院人間・環境学研究科(共生人間学専攻) 博士課程 修了(博士:人間・環境学)

2013年3月
京都大学 大学院人間・環境学研究科(共生人間学専攻) 修士課程 卒業(修士:人間・環境学)

2007年3月
京都大学 工学部工業化学科 卒業

教育歴

2017年〜現在
佛教大学教育学部 非常勤講師「心理学初級実習」「認知心理学特論」「心理統計法特論」

2018年
神戸総合医療専門学校 非常勤講師「心理測定法」

所属学会

日本心理学会 / 日本基礎心理学会 / 日本認知心理学会 / 日本バーチャルリアリティ学会 / Psychonomic Society / Vision Science Society

研究会:日本サイエンス・ビジュアリゼーション研究会 / 空間認知研究会 / 関西若手実験心理学研究会

外部研究資金・研究助成

2019-2020年
日本学術振興会, 研究活動スタート支援. 画像の記憶容易性を操作可能にする新規パラダイムの開拓. #19K23376.

2014–2015年
日本学術振興会, 特別研究員奨励費DC2. 土地高度の学習による水災害時の避難能力の強化. #14J01076.

2013年2月
公益財団法人京都大学教育研究振興財団, 国際研究集会発表助成.

2008年
京都大学情報環境機構, スーパーコンピュータ共同利用制度(若手研究者奨励枠). fMRIによる詳細な脳機能解析手法の確立とその応用.

受賞

2013年
日本心理学会第77回大会 学術大会優秀発表賞

2012年
第10回日本認知心理学会優秀発表賞 技術性評価部門

Technical skills

プログラミング言語
C#, Java, Processing, Python, R, MATLAB, JavaScript

ソフトウェア
Unity, Unreal Engine

技術
画像処理、コンピュータ・グラフィックス、VR、機械学習、眼球運動計測

資格
上級バーチャルリアリティ技術者(日本VR学会)

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